ウィスキーと盆栽

土曜日は大濠公園。

石川練に参加してきた。

8月から土曜日は早朝5時半集合になって、しばらく参加できなくなっていた。

いつもなら地下鉄の始発に乗って参加していた。

でも、私は車を持っている。

早起きするだけではないか。

なぜ来られないのか。

金曜日の夜のウイスキーである。

私は皆さんご承知のとおり、昔から飲んだくれだった。

最近は平日禁酒をしている。

月曜日から木曜日までは飲まない。

これが意外と悪くない。

朝起きたときの体調が、ものすごく良くなるからだ。

あの快感には代えられない。

とはいえ、会社で一日中ストレスを浴び、汗だくになって走って帰ってくる。

水曜日あたりから、だいぶ飲みたくなっている。

そして金曜日。

一週間が終わる。

解放日だ。

好きなウイスキーを取り出して、ガッツリ始める。

そうすると翌朝、車を運転できない。

石川練には行けない。

実に明快な話である。

石川練は、フルマラソンのための練習が中心だ。

そして、フルマラソンが一番得意なはずの私とガマちゃんが、揃って飲んだくれである。

練習を引っ張りたい二人が、深酒のせいで練習会に来られない。

何やら矛盾している。

この日は、家の向かいに住んでいるカペルくんが、快く車で送ってくれた。

私は前夜、ウイスキーをかなり飲んでいた。

自分で運転していたら、確実にアウトだった。

カペルくんは浅黒い肌をした、実に気さくで爽やかな青年である。

私より8歳ほど下だろうか。

堅実で、実直で、信頼できる人柄だ。

往復の車内で、私たちは故障の話をした。

ランナーが故障するのは、だいたい調子が良いときである。

サボって太りすぎて故障する、ということもなくはない。

しかし、多くの場合は違う。

身体が絞れてくる。

走るのが楽しくなる。

もっと走りたい。

もっと速くなりたい。

そう思ったところで、故障する。

「もし故障したら、君はどうなりますか?」

私は聞いてみた。

カペルくんは少し考えてから言った。

「私は……そもそも練習会には来なくなると思います」

そして、

「下手したら、走ることを辞める理由にもなるので。この趣味を潔く辞めてしまうかもしれません」

と言った。

その日の石川練にも、故障している人が何人か来ていた。

足に包帯を巻いている人。

足を引きずっている人。

走れないのに、いつもの場所に来ている。

何を話しかければいいのか、よく分からない。

私も故障したら、来なくなるタイプだ。

閉じこもる。

だから、

「また見張りに来てくださいね。私は見てもらうほうが、サボらずによく走れるんです」

とだけ言葉をおいて、その場を離れた。

家に帰った。

朝食を食べていると、息子が突然、

「釣りをしてみたい!」

と言い出した。

私は釣りとか虫取りとか、子供心で動物を殺す遊びが、どうも気質的に好きではない。

だから、

「ヘミングウェイみたいに動物を狩るんか」

などと言いながら、

「魚は釣っても食べられないから、やめておこう」

という話をしていた。

すると、それを横で聞いていた妻が、堰を切ったように話し始めた。

「あなたいつも、熱帯魚をまた飼いたい、熱帯魚をまた飼いたいって言うじゃない?」

ノックアウトされた。

あれは。

あれは魚だけど、

盆栽なんだ。

そう言いながら、私は必死に熱帯魚と釣りの違いを説明しようとした。

途中で、自分でも無理があることに気づいた。

私は白旗をあげて、

妻にコーヒーを作った。

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