アクアリウム

日曜日。

24キロのペース走をやろうとした。

11キロでやめた。

前日の土曜日、イタミさんから誘われた。

「大濠公園で30キロ、一緒にやりません? かなり暑いけど」

ありがたい誘いだった。

でも、家から大濠公園までは少し遠い。

前日も飲んでいた。

家族との約束もある。

今回は断った。

それでも、誘われたことが妙に嬉しかった。

だから翌朝、一人で近いことをすることにした。

8月最後の日。

夏休みの宿題を、最後の日にやる小学生みたいな気分だ。

野球場の外周を走る。

数周しただけで体温が上がった。

ペースが落ちる。

給水を持ってくればよかった。

野球場では、同じような中年たちが試合前のキャッチボールをしている。

そのうち何人かが外に出て、タバコを吸い始めた。

暑いからなのか。

サボりたいからなのか。

私も昨晩は、本を読みながらウイスキーを飲んでいた。

強くなりたいのか。弱くなりたいのか。

11キロで終了した。

24キロの宿題は終わらなかった。

でも、子育ての宿題は残っている。

この日は長女が友達と遊ぶことになったので、息子と次女を連れて出かけることにした。

「どこ行きたい?」

息子に聞く。

「水族館」

前日に私が、

「熱帯魚飼いたい。」

と言ったのを覚えていたのかもしれない。

マリンワールドへ行く。

私も、子どもの頃から何度も来ている。

昔はヒトデを触るのが怖かった。

中学生になると、リュウグウノツカイの標本に夢中になった。

大学生になると、デート相手に熱帯魚のウンチクを語って、たぶん嫌われた。

そして41歳になった今でも、大水槽は好きだ。

暗い水槽の前に立つと、自分が青い深海に沈んでいくような気がする。

魚が泳ぐ。

光が揺れる。

私も沈む。

「お父さん」

娘に叩かれた。

「お腹すいた」

日本海溝から現実に引き戻された。

そのままイルカショーへ行った。

昔のイルカショーとは違っていた。

イルカが飛ぶ。

人も一緒に飛ぶ。

観客にイルカがわざと水をかける。

いつの間にか、かなり体育会系になっている。

私は少し引いていた。

息子はもっと引いていた。

帰り道。

「楽しかった?」

息子に聞いた。

「サメが怖いからもう行かない」

昨日、僕が熱帯魚を飼いたいと言った。

今日は息子が水族館を選んだ。

そして、その結果がサメだ。

8月最後の日。

24キロのペース走は11キロで終わった。

水族館も、一回で終わった。

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