火曜日。
故障していると思っていたカイくんから、朝練のお誘いがあった。
多々良川朝5時スタート。
400m×10。
こんなに刺激的なデートのお誘いは、世界を探してもなかなか見つからない。
ガマちゃんとセンちゃんカレンさんも加わり、5人でスピード練習になった。
関西と比べると、福岡は日の出が遅い。
朝練とはいえ、5時はまだ真っ暗闇だ。
ヘッドライトがギリギリ必要な雰囲気である。
たかだか新幹線で2時間西に走るだけなのだが、練習する景色はまるで違う。
400mを10本。
ガマちゃん、カイくん、センちゃんと4人で押していく。
カレンさんも後ろから追いすがってくる。
6本目。
カイくんがシャツを脱ぎ捨てた。
カレンさんも脱ぎ捨てた。
センちゃんも脱ぎ捨てた。
河川敷にミケランジェロ彫刻が3体登場した。
ガマちゃんも脱ぎ捨てた。
だが、彼は私と同じ中年出っ腹だった。
福岡の練習会で、フルマラソンが得意なはずの私とガマちゃんの腹回りが同じ。
砂漠でオアシスに辿り着いたような気持ちになった。
ラクダは砂漠では大切な相棒である。
俺の腹が並べばフタコブラクダだ。
ところで、カイくんは故障ではなかった。
足にスマホを落として痛かっただけらしい。
カレンさんは今日が自己新記録だそうで嬉しそうだ。
これまで入れなかったスピード領域に入れた。
皆でおめでとうを言う。
私がその成長の役に立てたのなら、それはありがたいことだ。
しかし、暑い。
9月になって涼しくなった気がしたのは、マンションを出た瞬間だけだった。
涼しい涼しい。
サギである。
私がそう言うと、センちゃんが言った。
「風が無いから蒸発しない汗がまとわりつくとですよ。じゃあ服を脱げばよかです。何も身体に残らんとです」
そうか。
何かをまとわりつけていたのは、俺自身の精神だろう。
私はランシャツを脱がなかった。
朝の太陽とカレンさんは眩しかった。

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